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トピックス・インタビュー28

28
INTERVIEW
28『あうるすぽっと シェイクスピア・フェスティバル』鼎談 鵜山 仁さん×高瀬久男さん×三浦直之さん
『尺には尺を』『お気に召すまま』公演情報詳細はこちら
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2014年、あうるすぽっとでは年間を通して「あうるすぽっとシェイクスピアフェスティバル2014」と銘打った新たな企画を開催します。年明け、その先陣を切るのが、同じく「シェイクスピア祭」という企画を始動する文学座で、『尺には尺を』(鵜山演出)、『お気に召すまま』(高瀬演出)を交互上演で。さらに初夏には、若手気鋭の劇団ロロを率いる三浦直之が、『ロミオとジュリエット』でシェイクスピアを初演出。演劇界のベテランお二人と若き挑戦者。異色の顔合わせで、劇聖シェイクスピアの魅力について大いに語っていただきました。

2013.5 INTERVIEW

――キャリアも世代も異なるお三方にお集まりいただきましたので、まずはご自身のシェイクスピア体験からうかがえますか?

三浦:僕は今日は、お二人の大先輩に勉強させていただく気持ちだけでここへ来てますので、よろしくお願いします!

鵜山:いや、僕らも大したことは言えませんけれど。文学座では最初は福田恒存さん翻訳のシェイクスピアを上演してたんだよね。僕らが生まれた頃からかな。

高瀬:そうですね。

鵜山:で、僕らが入ってからは小田島雄志先生が新訳を手がけていらして、それをどんどん上演している時代だった。文学座で最後に「シェイクスピア祭」のように連続してシェイクスピアを上演したのは72年だから、随分前の話ですよ。僕が上京した頃は、出口典雄さんの「シェイクスピア・シアター」が渋谷の、今はなき小劇場のメッカだったジァンジァンで全作上演をやっている最中で。“ジーパン・シェイクスピア”という、衣裳も普段着で凝った装置もなく、バンドの生演奏を取り入れたスタイルの上演は刺激的でしたね。

高瀬:僕、その最終上演を観てますよジァンジァンで。全作上演に6年かかったんじゃないかな。僕は劇団より、シェイクスピア・シアターで観た作品が強烈に印象に残ってますし、そこで学んだことも多かった。実は文学座に居ながら、出口さんの演出助手をやらせていただいた時期があるんです。その全作上演でも一度だけ、出口さんの代わりに『ぺリクリーズ』を演出させてもらっていて。「疲れたからお前やるか?」と。上から出口さんがコワイ目で見てるなかでの演出は大変でしたが(笑)、非常に良い経験をさせてもらいました。

鵜山:まぁ、シェイクスピアに限らず、うちの劇団はあまり明確な方針を持って企画を立てていないというか、その時期、その代によってかなり違うからね、方向性が。世の中に目新しいことが起こると、そこに二番煎じ三番煎じで食いついていくのが文学座の特性(高瀬笑)。つかこうへいさんにしても、別役実さんにしても、シェイクスピアにしてもそこは同じでしょ。

高瀬:でも僕にとっては、先輩の鵜山さんがシェイクスピアを演出しだしてから、シェイクスピアを劇団で上演することのイメージが変わりました。最初は『十二夜』でしたよね。ガチャガチャしている、という言い方で合っているのかな。一つの焦点にまとめようという気がないのか、あちこちから掘り出すのか(笑)。そんな多面的な仕上がりのシェイクスピアを観ると、「やはりそういうものだよね」と強く共感できるんです。

三浦:うわぁ、既に演劇史みたいな話になってますね。僕なんか演劇に関心を持ち出したこと自体が大学に入ってからなので、まだ本当に日が浅くて。それまでは映画や小説が好きで見たり読んだりしていましたが、海外の古典戯曲を読む機会などほとんどありませんでした。劇団を立ち上げてからもオリジナルばかり作っていたので、古典は傍らに置いたまま。だから、あうるすぽっとさんにお話をいただいたときには、すぐ「やりたい!」と思ったんですが。

――三浦さんのシェイクスピア体験は、どこに遡るのですか?

三浦:まだ子供の頃に見た、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ロミオ+ジュリエット』が最初じゃないかと思います(鵜山、高瀬思わずため息)。僕は宮城で生まれ育ったのですが、地方都市では演劇に関する共通言語などほぼ存在しません。それでも『ロミオとジュリエット』なら、「ああ、悲恋物語だよね」くらいの認識はある。母に言っても「ああ、あれをやるの」くらいの話はできる、という点で自分で演出する際に選んだのが『ロミオとジュリエット』です。
それに、僕にとっては物語の骨格を引用して作品をつくるほうがやりやすいので、『ロミオとジュリエット』なら古典として大きな骨格を持っているから、それを使ってみたいなと。あと、僕は一貫して「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語を作ってきたので、そこでの蓄積が役立てられるかも、とも思っています。もちろん、これから勉強していくことが膨大に必要なんですが。

――鵜山さん、高瀬さんは、演出家としてキャリアを積む中で、「シェイクスピアはやっておかねば」と思うような場面もあったのでしょうか?

鵜山:それはありませんね。単純に「シェイクスピアなら切符が売れる」「我々が無名でも企画は通る」といった、イヤしい発想は持ったことがあるかも知れないけれど(笑)。非常に懐深く、予算がない場合はシンプルな演出でもできる。最近はそこまで現実的なことだけでは判断しませんが、若い頃はそんなものでした。

高瀬:僕も「シェイクスピアはやっておかねば」的な発想はありませんでした。でも、先に話した『ペリクリーズ』を演出させてもらったとき、「人間の想像力は自分が思っているもの以上かも知れない」という手ごたえを勝手に感じたんです。自分がつくった以上に作品を評価してくださる方がいたりしたもので。余計なことをせずに言葉に、せりふに委ねれば良い。そんな演劇の原点に触れさせてくれるのがシェイクスピアで、だから折に触れて演出したいと思うようになったんだと思います。やるたびに学ぶことも、とても多いですから。

――今回の連続上演に関しての作品選びは、どのように行なったのでしょう。

鵜山:最初は全然違う、「シェイクスピアの喜劇をやろう」という企画があったんですよ。それが色々と変転し、喜劇の部分は生かして、そこに「連続上演」という仕掛けがくっついた。僕はその前に『ヘンリー六世』『リチャード三世』など、続けてシェイクスピアの歴史劇を演出していたんですが、それらと喜劇の登場人物で相似形の者がいるんだ、ということに気づいて興味深く思っていたんです。似たような人間でも悲劇と喜劇、文脈や立ち位置が違うところから見ると見え方が違ってくる。そういう多面性、世界が多重構造になっていることを、シェイクスピア作品は見せやすい。それを演出してみたい、と思いました。まぁ、高瀬君とどっちがどっちをやるかは、実はジャンケンで決めたみたいなことではあるんだけど(笑)。

高瀬:最初は僕が『尺には尺を』を演出する予定だったんです。でも、以前別のところでやったことがあったので、それを言ったら「いいよ」と鵜山さんがアッサリ交換してくださって。

鵜山:まぁ、決まりきったことをするより面白いかな、と思って。

高瀬:今回の二作は、「面白いけれど、なかなか上演の機会がない」もの。色んなところに入り口があり、どんな演出にも応えてくれそうだけれど、いざ蓋を開けてみると結構中身は入り組んでいる。そんな骨のある作品を二作、お届けできるんじゃないかと思っています。

鵜山:劇団で上演する、という点でもシェイクスピアはピッタリなんですよ。僕が先の歴史劇を演出していてつくづく思ったのは、例えば劇中に長ぜりふあるとする。それを成り立たせているのは、それを口にしている俳優一人ではなく、皆の力なんです。舞台上にともにいる俳優はもちろん、その裏にいるスタッフまで全員が支えている。さらに広げて考えれば観客も、その場に居ない生きている人や死んでいる人、まだ生まれていない人までがこの舞台を、この一言を支えている、ということになっていく。せりふだけでなく、作品の長さ、時間にも同じことが言えるし、それは最終的に僕らの劇団が70数年続いている、その歴史にも繋がっていく。急に視覚がワイドになったのは年のせいかも知れないけれど(笑)、シェイクスピア作品のポテンシャルの大きさは、そんな宇宙的な時間についてまで考察させてくれる。それが、非常に刺激的で面白いんですよ。

高瀬:長いせりふがなぜ長いかを考えたとき、日常言語はそんなに長くないじゃないですか。一人ではそんなに喋ることもないし。でも戯曲では状況説明を含め全部喋るし、「喋る」ということで虚構の世界をつくっている。自分を騙すこともあれば、人に対するからこそ生まれる言葉もある。多彩な言葉の可能性、普通に日常を生きているときには生まれないようなことが舞台上で起こる。芝居の根拠を「嘘」とするなら、「嘘をつきながらどこかにぶち当たって本当のことを探す」というようなことが舞台上では起きていて、俳優は嘘をつきながら嘘の世界に入らないと、本当のことを喋れないんじゃないか、とも考えられる。
その意味で言うとシェイクスピアは、今の作家より新しいとも言えますよね。全員がそうとは言わないけれど、今はみな卑近なところ、手垢のついた言葉と肌触りの良い感覚で出来上がっている戯曲が多いですから。

三浦:僕なんか、まさにその卑近な演劇の世代ですね。会話だけで戯曲を進めるから相槌のような短い応答が多くなる。日常に近いところをベースに会話が進んでいくと、観客にとっても日常に引き寄せやすいけれど、シェイクスピアの、さっき仰ったような「長い言葉を口にする」ことなどは日常の感覚では無理で違う体力が必要になってくる。僕にとって、そういう普段考えないことを考える機会に今回はなるかな、と。僕と劇団のメンバー、新しく一緒にやる人と、そういうことも考えてみたいですね。

――色々なヴァージョンの翻訳があり、上演機会も多いシェイクスピア作品は、「どんな演出で見せるのか」ということに、普段以上に耳目が集まる気もします。その点を意識することはあるのでしょうか?

鵜山: 「新しい演出で」なんていうことじたい、シェイクスピア作品に関しては限界を超えていますから、考えても仕方ないですよ。もちろん、先達のやってきたことを勉強する楽しさは多少あると思いますが、新しいことなんて出てくるときはおのずと出てくる、巧んでやることではないんじゃないかな。シェイクスピアを演出したいと思うのは、僕の場合その風通しの良さ、気楽さによるところも大きいんです。コンセプトに縛られず、自由に発想を広げられる。既にやりつくされた、という現状がむしろプラスになるから。むしろ、「コンセプトありき」なんて姿勢を拒んでいるんじゃないかな、シェイクスピアの戯曲群は。スタンダードがない、とも言えるし。

高瀬:僕も同感です。原点はグローブ座のエプロンステージ。「あそこでやったとき、この作品はどう成立したんだろう?」と想像するわけです。戯曲ができた当時、太陽光線が照らす舞台に役者が出てきてただせりふを喋る。時々バルコニーに行ったりもするけれど、それだけで成立していた芝居に、むしろ今はかなわないんじゃないか、余計なことを付着させたら、と。付着させたいのは作っている側の「思い込み」。恐らくそんな「思い込み」は、ほとんど作品に拒絶されるんです。演技をする人本位に考え、余計なことをしなくても成立するのがシェイクスピアの作品だと思います。

三浦:僕は、「演出で見せよう」なんて恐れ多いことを考える段階にいません。単純に、これまでたくさんの方が演出してきた戯曲を、僕が演出したらどうなるのか。ただ、あまり自分に引き寄せてつくりたくない、とは思っていて。まだ方法は考えている段階ですが、「シェイクスピアを利用して、自分の思っていることを言う」みたいなことには絶対したくありません。

鵜山:三浦君、今いくつ?

三浦:もうすぐ26歳になります。

高瀬:羨ましいなぁ、26歳でシェイクスピアが演出できるんだ。僕が『ペリクリーズ』を演出した時、34だからね(笑)。

三浦:なんだかスミません……。

高瀬:(笑)いやいや。

三浦:でも本当に大きなチャンスをいただいたと思っているんです。改めて戯曲を読んで、強く感じたのは「言葉の気持ちよさ」。それに、僕は自分で創作するとき「何故それが起こったか」の、「何故」の部分を放置してしまいがちだと気づいたんです。「何故恋に落ちたか」より「恋に落ちたこと」そのものに、重きを置いて来たというか。そんな、自分が創作上放置していた問題に向き合うことにも、『ロミオとジュリエット』を通してなるんじゃないか、と思っています。

――文学座での交互上演に関して、演出のイメージなどは既に話し合われているのですか?

鵜山:チラッと打ち合せはして、仕込み替えの時間も限られているから二作が似たようなことになるとマズイなと話し合っています(笑)。同じ劇団にいるだけで充分ウザったい話だし(笑)、共通性などは意識しなくてもおのずと出てくるはず。それに装置家は一人、衣裳も照明家も一人なわけで、そこに違うイメージや要求を投げ込んでいけば、それなりに変わるんじゃないかな、と(笑)。

高瀬:僕、10数年前にも三本立て公演をやったことがあるんです、アトリエで。その時は「同じ装置で3本やろう」と約束して始めたのに、結果的に色んなものが付着して大変なことになった。今回が同じに事態になるとも思っていませんが、「同じ装置で」なんてルール、お客様が特別面白がることでもないので、こちらの都合を反映しつつ、ゆるーく打ち合せしている感じです(笑)。

鵜山:まだ日にちがあるから、あっと驚くようなコントラストを出せるといいな、とは思ってますけどね(笑)。

高瀬:具体案がないから、言った者勝ちですね、今は(笑)。

――では、そこは観てのお楽しみということで。ありがとうございました。

PROFILE プロフィール

鵜山 仁
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高瀬久男

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三浦直之

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タイアップ公演
あうるすぽっとシェイクスピアフェスティバル2014
『尺には尺を』
『お気に召すまま』

2014年2月11日(祝日・火曜)〜3月4日(火曜)

「この世界はすべてこれ一つの舞台、人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ」
あうるすぽっとシェイクスピアフェスティバル開幕!

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