豊島区立舞台芸術交流センター あうるすぽっとホームページ
ご使用中のブラウザのJavaScriptをONの状態に設定してください。

本文へスキップ

Information

  • コンセプト
  • 施設概要
  • 劇場ご利用案内
  • 「劇場」貸出受付状況」
  • 区民シリーズ
  • タイアップシリーズ
  • 会議室ご利用案内
  • 「会議室」受付カレンダー

外部リンク

  1. ホーム
  2. トピックス一覧
  3. インタビュー09

トピックス・インタビュー09

09 『淫乱斎英泉』 鈴木裕美×浅野和之 対談 INTERVIEW
トピックス一覧
INTERVIEW 劇作家・矢代静一が江戸時代の浮世絵師を題材にした三部作のひとつとして、1975年に書いた戯曲『淫乱斎英泉』。開国前夜、動乱の日本を対照的に駆け抜けた絵師と医師。二人の人間を通して人間の業に迫る戯曲に挑む、演出家・鈴木裕美さんと俳優・浅野和之さんにお話を聞きました。
2009|03|01 公演詳細 Question

今作は『写楽考』『北斎漫画』の二作と共に、劇作家・矢代静一の「浮世絵師三部作」のひとつ。お二人はこれまで、矢代作品とのご縁はあったのでしょうか。

鈴木:残念ながらあまりないんです。最近上演された『写楽考』を二度、別の演出で拝見したのと、他数本を観劇したくらい。戯曲も手軽に購入できないため、まとめて読む機会もなかなかなくて。
浅野:僕も何本か観たことがある程度。なぜか、若いときに出会わなかったんですよね。
鈴木:改めて読んでみると、登場人物の言動が面白かったんですよ。「お前らチビッコか!」と突っ込みたくなるぐらい、出て来る人全員が猥雑でエネルギッシュ。前後の関係性をまるで気にしてないような、「おいおい…」と言いたくなる考えなしぶりなんですよ。
浅野:わかるわかる(笑)。
鈴木:で、これ何かに似ている、と考えたら…シェイクスピアの戯曲に似ていると思うんです。登場人物がすごいテンションで、喋りまくる。それに、すぐ気持ちが変わったり激昂したり、裏切ったりと、「もう少しものを考えなさいよ」と言いたくなる、アノ感じにすごく似ているんですよ。『マクベス』や『リチャードV世』、『オセロ』、みんなそういう困った人の話じゃないですか。チェーホフみたいに、ウジウジ考えたきり行動しない人が出てこない。そういう共通項の発見は、演出のヒントになるかな、と今は漠然と思っているんです。
浅野:確かにこの戯曲の人々は、喋る量が多いね。最近の日本の戯曲は、傾向として言葉が少なくなっている感じがあるから、一読して「手ごわいな」とは僕も思いました。
鈴木:あ、ため息交じり(笑)。先日、本読みをしたとき医師・高野長英役の浅野さんと、英泉役の山路和弘さんは、額に筋が浮くほど台詞と格闘してらっしゃいましたからね。

浅野:たくさん喋るということは、すごくエネルギーがいること、その人の持っている力が問われることだと思うんですよ。最近の戯曲は、ひとつの台詞のセンテンスが短いし展開も速い。当然、戯曲の中に描かれる人間の質も変わっていると思う。だいたい、長大な台詞は書く人にも大きなエネルギーを要求するだろうしね。
鈴木:そういう違いは、若い作家さんと仕事をしていると確かに感じますよ。
浅野:台詞に限らず、若い子の会話を聞いていても、僕なんかイライラしちゃうことがあるんだよね。言葉が乏しくて汚い。でも会話の主たちを見ると、普通の子でね。コミュニケーションや会話の機会が減っているせいなのかなぁ。
鈴木:若い俳優さんと稽古していて、似たようなことを感じることがあります。2人で喋るシーンはスムーズにやれるのに、5人に増えると途端に関係性や距離感が取れなくなってしまう。実生活で、複雑な関係性になる状況を避けているのかなと思ったりします。
浅野:やはり、そういうことはあるんだ。ごめん、戯曲に関係ない話で盛り上がっているけど(笑)、「喋る量=人間のエネルギーの大きさ」という見方が、この作品を演じるのにすごく大事なことだと思ったので、つい話したくなって。
鈴木:いえいえ、私もそこ、ポイントだと思ってますから。

この作品は登場人物が少ないので、一際「喋る」量の多さが印象的です。

浅野:そう、三部作の中で一番、登場人物が少ない。しかも展開はそれほど大きくは変わらず、ただ時間が経過する中で、僕の演じる長英と娼婦のお半が時とともに変化し、英泉兄妹は変わらずにいるという対比で見せて行くんですよ。
鈴木:長英は七変化、と言いたくなるくらい変節していきますよね。「これが同じ人?」というほど。
浅野:そこがまたタイヘンなんだけど……でも俳優をやっているからには、そういうタイヘンな役、曲者に挑戦していくのは非常に大事なことだとは思ってますから、ハイ。
鈴木:3年に1本ぐらいはあってもいいですよね、こういうタイヘン。
浅野:そうね、色々とバランスは取っていかないと。

お二人は2005年の翻訳劇『ブラウニング・バージョン』でご一緒され、浅野さんはその際、大きな演劇賞も受賞されています。お互いでの芝居作りの醍醐味は、どんなところに感じていらっしゃるのでしょう?

浅野:お任せするところはもちろんだけれど、裕美ちゃんとは「一緒に創れる」ことが一番楽しい。要求はもちろんあるけど押しつけないし、僕ら俳優の話をちゃんと聞いてくれる。芝居作りのための、良い環境を用意してくれる演出家ですよね。
鈴木:俳優さんと、ちゃんとキャッチボールすることが、演出家としての私の楽しみですから。「こう思うんですけど」と投げた球を俳優さんがちゃんと受け取り、そこで奇跡のように何かが生まれ、まったく違う玉が返って来る。そういう瞬間が、たくさんある稽古場は大好きです。今回なんか、奇跡が一杯起こりそう。これだけ大人な俳優さんが揃っているうえで、チビッコな人物がもがく芝居を作るんですから(笑)。
浅野さんのような経験が豊富な俳優さんとの芝居作りは、同じ戯曲を旅するにしても、より遠いところ・高いところまで行ける感覚があるんです。道が曲がりくねっていても、デコボコでも、それすら歩く楽しみになるような旅路。浅野さんも山路さんも、そんな旅の楽しさを存分に味わわせてくれる俳優さんだと思っています。しかもお二人、同い年なんですよね。
浅野:そうそう、共演は一回だけなんだけど。
鈴木:役の設定上は、二人の年齢は違うんだけれど、舞台上で並んだときにバディ物みたいに見えたらいいなと、私は思っているんです。よくあるでしょ、刑事モノとかでベテランと新米が組んで事件解決に当たるとか、ああいう二人のコンビネーションが生きる見せ方を、浅野さんと山路さんでできたら面白いなと思って。

これは、幕末という時代に二人の男がどう立ち向かったかを描いた作品でもあると思うのですが、同時に荒れる時代に翻弄される人間を見つめる普遍性も持っていると思えます。作品と時代の関係性、お二人はどのように考えていらっしゃるのでしょう。

鈴木:質問の意図はよくわかるけれど……私にとってすごく答えにくいことなんですよね、どんな作品のときでも。
浅野:これ、矢代さんは学生運動に重ねて書いているんですよね。時代を、世間を変革しようとして、成し遂げられなかった高野長英はまさに60年安保、全共闘の闘志。
でも僕は、そういう執筆の背景的なことは余り意識して読んでいないんです。演じるなかでそういう背景が重なって見えるならそれもいい。でも、そういう意図は多分演出家の領分で、僕は知識や材料として、「そういう作家の意図もありました」ということを理解していればいいだけで、舞台上では共演の方々と、物語の中の人間を演じることに力を注ぐだけです。

鈴木:「なぜ、今この芝居を上演するのか」という質問を、取材で受ける機会が多いんです。でも私、さっきも言ったように、上手く答えられないなと思うことが多いんです。
ただ以前、村上龍さんが「書くのに行き詰まると新宿の副都心を見にいく。漱石も芥川も太宰もこの景色を見ていない、だから自分には新しいものが書けるはずだ、と自分を奮い立たせる」と書いたか言ったかされたのを、見聞きした記憶があって。ちょっと格好良過ぎるので、ホントかどうかはさだかじゃないですが(笑)、その気分はとても良くわかるんです。
矢代さんが30年以上前に書かれた戯曲を、今私たちが上演するのに必要なものは、新しい演出意図ではないように思うんです。宣伝用のコピーには必要かもしれないけれど、言葉でわかりやすく言えるようなものはそもそも、お芝居に必要ないんじゃないか、と。現代の東京に生きている私たちが、ホントに面白く自分たちがグっとくるように上演できたら、それが「今この芝居を上演する意味」であり、すべてのように私には思えるんです。
浅野:僕もそう思う。解釈したい人や、テーマを探したい人、切り口の新旧にこだわりたい人は自由にすればいい。それも含めて、舞台を観る楽しさだからね。
鈴木:ですよね。で、私が見せたいのはとにかく俳優。俳優を見るものだと思うんです、演劇は。特にこの本には、最初に言ったようなシェイクスピア的に極端な人間たち、怪物的なキャラクターしか出て来ないじゃないですか。俳優を、日常では決して出会えないもの、飼いならされた家畜ではなく、人の手には負えない獣として舞台に乗せ、観客にぶつけるのがこの作品の求めることじゃないかと私は思ってます。何より矢代さんご自身が、書きながら「家畜みたいな演技をする俳優になんか、俺はグっとこねえよ!」と挑発していた気がしてならない。だから、浅野さんたちには怪物になって頂く、それが今回最大の指針です。
浅野:あー、やっぱりタイヘンなわけですね(笑)。
鈴木:絶対に楽しいですよ! だって、この前の本読みで、十分に怪物の予感ありましたから(笑)。ちなみに、劇場から道路を挟んで反対側にある雑司が谷霊園に、矢代さんのお墓があるんですって。上演中、毎日観にいらっしゃるんじゃないですかね、矢代さんも。
浅野:おー、それはスゴイ体験になりそう!

取材・文/尾上そら
撮影/市来朋久

PROFILE/プロフィール

鈴木裕美
星座:山羊座/生年月日:1963年12月30日
出身地:東京都
劇作家・演出家

浅野和之
星座:水瓶座/生年月日:1954年2月2日
出身地:東京都
俳優

Question

Question

インタビューの最後に「あうるすぽっと」恒例の
『好きなもの+夢』アンケートをお伺いしました。

PAGE TOP


淫乱斎英泉

プロデュース公演

2009年4月2日(木)〜12日(日)

『淫乱斎英泉』

矢代静一の浮世絵師三部作より、満を持して上演!
江戸・幕末の頃、絡み合いながら生き喘ぐ人間たちがいた。

○作:矢代静一
○演出:鈴木裕美
○出演:浅野和之 田中美里 木下政治
高橋由美子 山路和弘

詳しくはこちら

PAGE TOP
あうるすぽっと【豊島区立舞台芸術交流センター】
170-0013 東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2F・3F
TEL.03-5391-0751 FAX.03-5391-0752
(C)2018 OWL SPOT ALL RIGHT RESERVED.

※禁 無断転載