これは、幕末という時代に二人の男がどう立ち向かったかを描いた作品でもあると思うのですが、同時に荒れる時代に翻弄される人間を見つめる普遍性も持っていると思えます。作品と時代の関係性、お二人はどのように考えていらっしゃるのでしょう。
鈴木:質問の意図はよくわかるけれど……私にとってすごく答えにくいことなんですよね、どんな作品のときでも。
浅野:これ、矢代さんは学生運動に重ねて書いているんですよね。時代を、世間を変革しようとして、成し遂げられなかった高野長英はまさに60年安保、全共闘の闘志。
でも僕は、そういう執筆の背景的なことは余り意識して読んでいないんです。演じるなかでそういう背景が重なって見えるならそれもいい。でも、そういう意図は多分演出家の領分で、僕は知識や材料として、「そういう作家の意図もありました」ということを理解していればいいだけで、舞台上では共演の方々と、物語の中の人間を演じることに力を注ぐだけです。
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