勝村さんは、演じる元教師で物書きのアルフレッドに関してはどうお考えでしょうか。
勝村:具体的にはまだ考えていませんが、嫌な感じが常に出せたらいいかな、と。決して爽やかではない感じ。「イヤらしい」と演出家も繰り返し言いましたが、個人が抱えるイヤらしさってそれぞれに違いますよね? アルフレッドだけでなく、それぞれの人物にその「イヤらしさ」が出てくれば面白いと僕は思う。そこは、タニノさんの演出が何を引き出し、どう表現するかで変わってくる部分でしょうし。でも「飛びっきり」な感じがあるといいですよね、それぞれの中で。松葉杖で興奮するヘンタイ演出家とは初めての出会いですが、僕の中では素晴らしい感性だと思う(笑)。
先日タニノさんの芝居を拝見して思ったのは、人間の汚い部分をちゃんと描こうとしていて、とても面白かった。非常にまっとうな演劇だと思ったんです。この話もそうですが、きれいに収拾しようとするけれど、内には汚いエゴがいっぱいある物語ですよね。邪魔に思っていた子供がいざ死んでみると、両親は背負った十字架の重さに耐えられずどうしていいかわからない。結局、最初から最後まで人間なんてニッチもサッチも行かない、という話ですから。
タニノ:そう、その割りに登場人物たちの、子供の死という悲劇の後の会話も意外なほど自分勝手で、「子供が死んで話すようなことじゃないだろう!」って内容なんですよね。そういうところもいちいちエロい。どうしようもなく、生きている自分が大事というか、その生々しさと人間の深い部分を覗かせるようなエロさ、それを舞台で同時に見せられたらいいかな、と思っています。
勝村:うん。きっと観ている人が少しでもイヤな気持ちになったら、この舞台はある種成功なんじゃないかな。勝手を言わせてもらえば。演劇は問題を提起するもので、観たあと、いかに多くを考えてもらうかが勝負でしょ。この作品には、考え、自分と向き合うための要素が一杯に詰まっているから。
取材・文/尾上そら
撮影/市来朋久
メイク/新宮利彦(SURGE)
スタイリスト/池山尚樹
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