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トピックス・インタビュー22

22
INTERVIEW
「tick,tick... BOOM!」山本耕史さん
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1990年のニューヨークを舞台に、ブロードウェイ作曲家としての成功を目指す青年が、夢のタイムリミットと感じる30歳の誕生日を迎えるまでの1週間を描いた『tick,tick... BOOM!』。この作品は、10年以上のロングランとなり映画化もされたミュージカル『RENT』(1996年)の作者ジョナサン・ラーソンが、その成功を知らないままこの世を去る数年前に書き遺していた自伝的要素の強い作品です。主人公ジョナサンを演じ、演出も手がける山本耕史さんに、公演への意気込みをうかがいました。

2012.06.01 INTERVIEW

――2003年、06年に続いて3度目の主役を演じられるわけですが、今回は山本さんが翻訳・訳詞・演出も務めるということで、これまでの舞台と意味合いが違いますか?

山本:この作品については、これさえ掴んでいれば大丈夫だという、作品が持っている核の部分を初演のときにすでに得ているので、それを表現するという意味では変わらないですね。逆にいえば、僕の中にある確かなものが伝われば、ある程度のことはそぎ落としたり、表現を変えても良いんじゃないかな。あとは共演者2人の新しい才能にめぐり合えるという期待があります。

――その2人にジェロさんとすみれさんを選ばれた意図は。

山本:前回の再演のとき、ルームメイトの親友役がゲイリー・アドキンスという黒人の役者さんでした。セリフはもちろん日本語なんですけど、いろんな人種が生活しているニューヨークが舞台のミュージカルに黒人の彼が出ることで、とてもインパクトがあったんです。それで今回も日本人だけでキャストを揃える必要はないなと考え、マイケル役をジェロさん、恋人のスーザン役をアメリカで育ったすみれさんにお願いしました。
僕はパフォーマンスの基本というのは、頭で考えないことだと思っているんです。ましてや今回はミュージカルなので、日本語の一つひとつを立ちどまって考えるのではなく、もっと感覚的にセッションできればいいなと思って、とても楽しみにしてますね。もしかしたら今回は3人のなかで僕が一番考えこむことなるんじゃないかな(笑)。

――演出家として山本さんが心がけていることはありますか?

山本:自分の言ったことに責任を持つと同時に、ヘンなこだわりを持たないことですね。試してみて違うと思ったらすぐ変えるし、分からない時は「分からないから好きにやってみて」と言う。でも、自分が演じないものには演出できないですね。「こうやって」と言った時に、自分のイメージで動けないと駄目というか。今回の場合は、ジョナサン・ラーソンの表現について、僕は結構細かいニュアンスまで理解してるかなと感じているので、不安はまったくないですね。

――ジョナサン・ラーソンの歌や楽曲の特徴はどんなところでしょうか。

山本:彼はスティーブン・ソンドハイム(『太平洋序曲』『スウィーニー・トッド』など)に影響を受けていて、『RENT』でミュージカルの世界に新たな息吹を吹かせたように、独創性に富んでいながらエンターテインメント性に溢れた曲を書く人です。『tick,tick... BOOM!』は『RENT』より前に書かれた作品で、粗削りな部分があるんですが、その粗削りさの中に、葛藤や若さ、情熱といったものがぎっしりと詰まっています。とてもキャッチーな曲であると同時に、マニアックな曲調でもあるし、1曲ごとに彼が伝えたい強い思いが必ず盛り込まれている。僕もいろんな人の作品をやりましたが、中でもずば抜けていますね。

――時代設定や舞台は異なっていても、その悩みや葛藤は、今の若者や表現を目指す人々が抱えるものと変わりません。

山本:ジョナサン・ラーソン自身が自らの成功を知ることなく逝ってしまった(『RENT』のプレビュー公演初日の前夜に死去)ということもあるけれど、この作品は、最後に人生が一変するような特別なハッピーエンドが用意されているわけではなく、その魅力というのは、太陽と月で言えば、月の部分が表現されているところなんです。ひとりの青年が不器用に生きながら、ときに明るく振る舞ってみたり、暗く落ち込んだりして、現実を受け入れることによって時が流れていく。30歳という区切りを題材にしてはいるけど、その毎日こそが重要なんだいうことを気づかせてくれます。苦しんだり悩んだり、人と別れたり手を取り合ったり、そういうことが「生きる」ということ。それが観る人に伝えられたら、この『tick,tick... BOOM!』も10年後も、20年後も上演され続ける作品になるんじゃないかと思います。

――06年に山本さんは主人公と同じ年齢でしたが、今回は作者ジョナサンが亡くなったのと同じ35歳で、30歳になるジョナサンを演じます。

山本:自分の年齢より年下の役を演じることは別に特別なことじゃないけれど、この作品の場合に限っては、自分が主人公と同じ30歳になるときに演じていることもあって、ちょっと考えるところはありますね。もしかしたら、ある面ではその時の自分には絶対勝てないのかもしれない。でもこの芝居の核になっている部分は自分の中にあるので、あとはそれをどういうふうに表現していこうかということだけを考えています。

――山本さんにとって、これまでに人生やキャリアの転機となる年齢や作品はありましたか?

山本:僕にとっては、やっぱり同じくラーソンの代表作『RENT』なんですよ。日本版で主人公マークを演じたときが21歳だったと思いますが、「あ、俺ってこういうことができるんだ!」って、自分で自分の可能性に気づいた作品だったんです。それをきっかけにニューヨークに行って留学みたいなことをしたり、その後の自分のやるべき道というものが見えてきた。だから、ジョナサン・ラーソンの作品には個人的にも思い入れがあるんです。

――前回の公演では、バンドもステージに上げて演奏自体が見えるようになっていましたが、今回はどうですか?

山本:そこについてはまだ何も決めていないです。作品として伝える上でもっと大事なものがあるから、スタイルにはあまりこだわってないですね。

――昨年起きた東日本大震災によって、現実とフィクションの関係が逆転してしまったとも言えますが、逆に今こそフィクションの力が試されている時期なのかもしれません。

山本:震災の時も僕は舞台に上がっていました。本番中に揺れはじめて、中断して再開したあとにも大きな余震があって、結局その日の公演は中止になりました。それから翌日は上演すべきかどうか、スタッフと出演者の間で議論になったんですけど、僕は「やる」という選択肢しか思い浮かびませんでした。僕たちにできることはパフォーマンスしかないわけだから、どんな状況でもやれる環境にあるなら、僕はやることで何かが回っていくような気がするんです。

――同じように、ジョナサンの作品からも前に進むことの強い意志を感じます。

山本:そうですね。でも、「意思」と言うけど、自分が思ってるほど自分って前にも進んでないし、自分が感じるほど止まってもいなくて、実は時に流されてるんですよ。悲しいと思っている間にも時間は過ぎるわけで、さっきの悲しい自分と今の悲しい自分は、1秒違えばもう同じではない。だから、それが前向きなのか後ろ向きなのかということが重要なんじゃなくて、どういう状況でも生きている限り、何かを感じているっていうことが大切なんです。何を選ぶのも自分次第だし、逆に選ばないのも生きているということ。だからこの作品で僕が好きなのは、何が正しいとも間違ってるとも提示してないところです。「でも、とにかく生きてるんだよ!」ということを強烈に訴えかけてくれる。そういう意味では、フィクションではあるんだけど、確かな現実でもあるんです。

取材・文/小林英治
撮影/市来朋久

 
PROFILE プロフィール

山本耕史
生年月日:1976年10月31日
出身地:東京

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INFORMATION

プロデュース公演
Team YAMAMOTO Presents
『tick,tick...BOOM!』

2012年2月12日(日曜)

『RENT』の作者・ジョナサン・ラーソンが遺した、もう一つのミュージカル

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