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いまや池袋の街の新たな夏の風物詩として定着しつつある『にゅ〜盆踊り』。劇場から池袋西口公園へと飛び出し、年々リピーターを含む参加者を増やしているこのプログラム。昨年はおよそ3500人もの方々が足を運んでくださったのも、豊島区在住の振付家・ダンサーである『にゅ〜盆踊り』生みの親・近藤良平さんと、コンドルズの絶妙なリードの賜物でしょう。
4年目を迎えるこの夏、‘にゅ〜盆踊り’はどのような進化を果たすのか? ダンスの可能性を遊び心たっぷりに追求する、4人の‘にゅ〜盆’首謀者にいち早く訊いてみました。
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――あうるすぽっとでの第1回公演以来、皆さんが盛り上げてくださった『にゅ〜盆踊り』。 山本:急に暑くなったような気がしますね(笑)。 近藤:(笑)気持ちからつくるのが大事だからね。いや僕は4年前、まだ『にゅ〜盆踊り』という作品名すら決まってない、構想もまだない状態で取材を受けてるんだけど、その時の記事を読み返したら意外に間違ったこと言ってなかったなあと思って。「浅草のサンバやスーパーよさこいとは違う、日本独特のゆるい動きで、皆が円になって踊れるようなものを」とか、まさに今やっていることだし、ペアになって踊るっていうのがなかったくらいで。 藤田:見切り発車したわりには、ゴールは間違ってなかった、と(笑)。 近藤:そうそう。でも、「あうるすぽっとの 山本:あの櫓の上で立候補したら、選挙とか絶対当選だよね(笑)。 鎌倉:何かの選挙日に合わせて開催する?(笑)。 山本:皆でおそろいのタスキをかけて、良平の名前を連呼してみようか。 近藤:いいよもう、区内では既に顔が知られてて警察官にも声かけられるんだから。何か違反してるのかと思ってドキッとしたよ(笑)。 ――コンドルズとしても近藤さん個人でも、一般の方々を交えた創作やワークショップは色々経験があるかと思いますが、『にゅ〜盆踊り』の創作過程は何か違った手応えなどありましたか? 藤田:参加される方がお子さんから80代くらいまでだったり、外国の方もいらしたりと、これだけ幅広いことも珍しいですよね。 鎌倉:本番は、通りすがりの通行人の方たちまで巻き込むことになって、それも初めてで楽しい体験だったし。 山本:ドキドキもしたけど、「酔ってカラむ人は来ないか?」とか(笑)。 藤田:人を巻き込むことに関しては僕ら4人だけでなく、先にワークショップを受けて振りを覚え、本番の盆踊り大会を一緒に盛り上げてくれる「シャー」と命名したワークショップ参加者がいたから助かったけど。 近藤:そうそう、「シャー」の人たちとは豊島区内の6ヶ所ある施設で、それぞれワークショップをやるんですよ。1回30人くらいで6回だから約180人。それが3年間(3回)だから「シャー」だけで500人近くいるって、すごい数だね、改めて考えると。リピーターも多いんだよね。 藤田:毎年、新しい「シャー」も増えてるし。 山本:たまたま通りかかって参加した方も、翌年も来てくれることが多いですよね。 近藤:面白かったのは、地域の盆踊りに参加させてもらったこと。去年は行けなかったけど、一昨年巣鴨の地蔵通り商店街の盆踊り大会に行ったんだよね。あれはライブみたいに時間ごとのスケジュールが決まっていて、僕ら7時30分から20分間というコアな時間帯をもらったんです。「にゅ〜盆踊りの皆さん、どうぞ!」とか呼ばれて、どちらかというとご年配の多いなかで踊ったんだけど、我々は人数が多いし若いから、場が活気づいちゃって。 藤田:華やかでしたよね(笑)。 近藤:その経験からプロデューサーとも相談して、『にゅ〜盆踊り』大会の中でも本物の盆踊りを踊ってもらうコーナーをつくることにしたんです。 藤田:踊るとき、腰が座ってるんですよね。 近藤:そうそう。カッコイイから、結局会場にいた全員で「炭坑節」を踊ったりしてね。 山本:相乗効果になったんですよね、お互いの踊りが。 近藤:そうそう、それが僕的にはこの4年間で一番大きな経験だった。昔からの盆踊りも「古いものは廃れてくだけ」というのではなく、王道の踊りのほうがむしろカッコイイところもあるんだ、と底力を見せてもらった気がしたんだよね。 ――人だけでなく、新旧の踊りの交流もできてしまった、と。 近藤:そう! それも僕らがヨイショっと持ち上げたわけじゃなく、会場にいたみなさんのほうから自然に盛り上がってくださったんですよ。 山本:僕らの踊りだけでも相当汗かくのに、「まだ踊るか?」っていうくらい、皆さん踊り続けてましたよね(笑)。 |
近藤:この企画、僕らにとっても出会いや発見が多いんですよ。王道の盆踊りをちゃんと踊ってらっしゃるグループの方とか、和太鼓の団体の方とか。僕らコンドルズも特殊だけど、和太鼓のグループの方にもなかなかお目にかかれないじゃないですか。で、ダンスの側からもゲストがいたらいいな、と思ってもいるんです。 藤田:チャリティ手ぬぐいをつくって、参加者に協力をお願いしたり。まだ在庫ありますんで、今年もお願いします!(笑)。 ――一般的なダンスのような高いテンションではないのに、踊るうちに段々皆さんのボルテージが上がっていくのも興味深いところでした。 近藤:コンドルズはやはり舞台の人間だから、自分たちの作品を創るときと同じように『にゅ〜盆踊り』には笑わせる、盛り上がらせる仕掛けをしているんですよ。だって、本物の盆踊りや阿波踊りみたいなものって、もっとタイトでしょ? 藤田:そうそう、綺麗だけど遊びは少ないですよね。 近藤:ちゃんと練習するキビしい世界だと思うんだ。でも『にゅ〜盆踊り』はある意味、邪念ばっかりだから。「モテるくらいカッコよく見えるように」とかそのレベルだもん(笑)。でも元々の盆踊りは、男子が女子を、女子が男子を誘うような場でもあったらしいけどね。 ――作品に対して、皆さん4人の役割分担があるのも面白いですよね。 近藤:でしょ? メインボーカル山本、サブボーカル(合いの手)藤田、僕が笛を吹く役で、鎌倉さんが一番暴れてる人(笑)。 ――鎌倉さん、一般の人の中で先導するのは客席に向けての表現とだいぶ違うのでは? 鎌倉:まあ、流れですね、そこは。 近藤:立ってるだけでインパクトありますから。「着いて行かなきゃ」と皆も思うんじゃないですか、モーゼのように人波が割れる、みたいな先導力ですよ(全員笑)。 藤田:あと、360度人に囲まれている状態が刺激的ですね。客席だと相対するのは一面だけですけど、これはどこ見ても人がいる。 山本:イイ気分じゃないの? 藤田:イイ気分でもあるし、単純に「おぉ!」と思うよね。 鎌倉:踊り続けてると意外と感じないんだけど、櫓の上から見るのはかなり楽しい。「おー、スゴいことになってるな」と。それに、僕らのほうも半分観客的なところがあると思うんです。全体を眺める視点みたいなものを、踊りながらも持っているので。だから、いつも以上に参加者と密な、良い関係になれている気がします。 ――近藤さんは海外育ちでもあり盆踊り経験がほぼないと伺いましたが、他のお三方はいかがでした? 山本:祭りや盆踊りは楽しみにしてるけど、たいがい風邪引くみたいな残念な子供時代でしたねえ(笑)。 藤田:お囃子が聞こえると自転車でよく駆けつけてました。うちの盆踊りには休憩が何回もあって「今踊った人集まれー」って言われて、行くとアイスクリームやジュースがもらえたりしたんです。ノートや鉛筆もあったな。 鎌倉:すごいね、なんか盛り上がりそう。 藤田:だから“ピ〜ヒャラ”と聞こえるとワーっと子供が集まる。また踊るとオバサンとかが褒めてくれるんです、「若いのに上手ねえ。ここはこうするともっとイイわ」とか。あの時から僕は年上好きになったんじゃないかな、と(全員笑)。 近藤:(笑)聞いてないよ! 鎌倉:そこまで熱い思い出は僕にはないなぁ……。 藤田:娯楽がなかったんですよ。だってテレビが2局しかないんですから、ウチの地元。 近藤:そりゃ盆踊りで盛り上がる環境だね(笑)。 |
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――近藤さんとコンドルズの活動は、その広がりと共にダンスの有効性、コミュニケーション・ツールなどとしての機能を認知させる役割もあるような気がします。『にゅ〜盆踊り』は地域社会の絆の再確認にも役立っているようですし。 近藤:そう言ってもらえるのは嬉しいですよ、「俺ら良いことしてるじゃん」と思えるし(笑)。でも、難しいことじゃなく、そういう役割を果たしつつもやはり、参加する人が楽しんで盛り上がれないと僕はイヤなんですよ。だからそういう仕掛けは、この『にゅ〜盆踊り』でも機会を重ねるごとに、考えていきたいですよね。 ――ちなみに今夏の盛り上げアイデアはどうなっているのでしょう? 近藤:去年が省電力エコモードでおとなしめだったから、今年はパッと盛り上がりたいよね。 山本:先導係としてはどうなの? 鎌倉:どう、、、でしょうねぇ。 山本:坂本冬美さんとか、演歌歌手のゲストを迎えて、歌謡ショーとセットはどう?僕とのデュエットもありで(笑)。 藤田:それ、女性歌手限定ですよね、絶対(笑)。でも宣伝とかも派手にやりたいですよね。踊りのPART2を創るとかは? 山本:それは今の振りで10年はやってからでしょ。 鎌倉:屋台や出店を増やすとかは? 近藤:本編の盛り上げと関係なくない?(笑)。 藤田:西口広場の会場が、意外に手狭になってる気がするんですよ。噴水のほうまでバーっと広げるとかもアリじゃないですか? 近藤:確かに動線がちょっとぐちゃっとしてきたよね。 鎌倉:いっそ、櫓を増やしますか? 近藤 :色々楽しいプランを考えておかないとね!
取材・文/尾上そら |
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近藤良平 |
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池袋の街で大盆踊り大会〜
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