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トピックス・インタビュー18

18
INTERVIEW
「家電のように解り合えない」鼎談 岡田利規さん×森山開次さん×金氏徹平さん
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現代日本の「リアル」を若者の生態を通して鋭く描き続けるチェルフィッチュの岡田利規さん。深く人間の内面を見つめ、その奥に潜むものを研ぎ澄まされた感性でダンスに昇華する森山開次さん。独創性の高いその創作が、海外でも高く評価されるアーティスト二人に、さらに新進気鋭の現代美術家・金氏徹平さんが加わった、「事件」と呼ぶべきユニットがあうるすぽっとで始動します。『家電のように解り合えない』。謎めいたタイトル同様に、予測不可能な創作の歩みを既にスタートさせているお三方に、それぞれの展望を伺いました。

2011.06.27 INTERVIEW

――非常に刺激的なコラボレーションが期待される方々がおそろいですが、企画の始まりはどのようなことだったのでしょうか。

岡田:あうるすぽっとから、森山開次さんと僕とで作品を作らないかという話を持ちかけられたのがきっかけです。で、美術をどんな人に頼もうかと考えてたら、舞台美術家じゃない人にしたいと思ったんですよ。演出家の意図をよく汲んでくれる人というより、その人のやりたいことを好きにやってくれる人がいいなと。もちろん、好きにやったその結果がすごくおもしろいことになりそうな人でね。それで金氏さんの名前が思い浮かんで、声をかけてみたら、乗ってくれたという、そういったわけでこのメンバーなんです。

――それぞれどのようにな出会い、接点をお持ちだった他のでしょう。

岡田:2009年に僕が新国立劇場で演出した仕事(『タトゥー』)を作家の福永信さんと一緒に金氏さん一緒に金氏さんが観に来てくれたのが、最初ですね。

森山:僕との出会いは、岡田さんに2006年の僕のソロ公演『KATANA』をご覧いただいたのが最初だったと思います。自分で観に行ったのは2010年、横浜美術館で行われた『私たちは無傷な別人であるのか』ですね。「チェルフィッチュの舞台が面白い」という噂は周囲から随分聞いていて、僕は普段一人で創っているから、外の方の情報にはアンテナを広く張るようにしているんです。予備知識があまりないまま観に行ったんですが、とても面白かった。

金氏:それは僕も同じです。そもそも僕は、舞台などを観に行く機会があまりなかったんですが、岡田さんの作品には興味があったんです。実際、観た時も最初から楽しめて、無茶苦茶面白かった。なんというか「普通にわかる」感じがしたんですよね。そのあと急に、舞台を観る機会が増えました。

森山:僕は普段、色々と咀嚼しながら作品を創っているつもりですが、自分だけでやっていると、なかなか自分から脱却できない。「誰かにいじってもらいたい願望」がすごく強かったんです。演出されたいというか、自分ではないものを含めて創りたい。そう思いながら岡田さんの作品も観ていた。なんでしょう……僕がダンスで表現するということは、言い方に語弊があるかも知れないけれど、感情などを劇的に演出する、「芝居する」「創る」「ストーリーの何かを演じる」というような、創りながら要素を加え、幻想的な世界観を構築していくケースが多かった。
 それに比べ岡田さんは、シンプルで端的なところからものを創っていると感じたんです。私生活の断片を題材にし、日常の会話や身体の動きを出発点にしながら、それらが次第に別の次元へとスライドしていく。等身大から始まり、最終的には劇的な別の空間へと至るような変遷の斬新さが興味深くて。岡田さんの、僕とはある種真逆の感性に非常に関心を持ち、表現者としてああいう言葉を喋ってみたい、あの表現に加わってみたいと思いました。

岡田:じゃあ、ぜひ喋ってもらいましょう! 今回は森山さんのダンスにしても、金氏さんの美術にしても、他のスタッフワークも、それぞれがやりたいようにやって、収拾が付いてないくらいのものになったらいいかなと思ってます。僕はそれらをちょっと整理するだけで仕事終わり、みたいな。
 自分の方法論とか美意識を貫いて作ることって、僕にとって別に難しくないんです。そうじゃないやり方で作ることに今、興味がありますね。チェルフィッチュの俳優も以前は僕の方法の忠実な実践者みたいなところがあったけど、最近はそれを創造的に裏切るようになっていて、そのほうがパフォーマンスに厚みが出ますよね。今回も、チェルフィッチュのときとは違う仕方で、でも基本的にはその考え方で作りたい。
 何かを提示してくれない人との仕事はつまらない。俳優でも同じで、台詞をただ喋るだけでもいいいけれど、僕が「こういうことやって欲しい」ということをやるだけじゃなく、むしろ「あ、そういうのやるんだ」というものを提示してくれたとき、創作上、拮抗する関係になるわけで。それら提示された色んな要素を、どういうふうに置いたらゴツゴツした存在感になるか、観るに足るものになるかを演出家である僕は考えればいい。この「提示してくれる人」というハードルは、決して低くないハードルだと思うけれど、森山さん、金氏さんのお二人はできる。そういう信頼は確実にあります。
 僕は演出家の仕事って他のキャストやスタッフに先んじて何かを提示することだとは思ってなくて、むしろ逆だと、これはあくまで僕の考えですが、むしろどう上手く後手に回るかを考えることが大切じゃないか、と。それは「楽をしたい」という僕の根性の賜物でもあるけれど(笑)、作品にとっても、創ることに関わる人間にとっても、それが良い方法だというのが僕の演出に対する考え方なんです。

――既に岡田さん、森山さん、出演する俳優の方々でのワークショップが行われていますね。

岡田:ええ、少し作品のフォルムが見える瞬間もあって、良い時間を過ごしています。

森山:そこまでいくために、実はかなりの時間を積み重ねているんですけれど。どにかく動いてみる、題材のないところでも「何かやってみよう」ということの繰り返しですよね。
 はじめは岡田さんの言葉によく分からないところがあったんです。でも段々それがハマってきまして、今は勉強できているのかどうか分からないけれど、岡田さんの口から出るのがシンプルな言葉に聞こえ始めた。むしろ「なぜ最初すぐに分からなかったんだろう?」と不思議なくらいです。行っていること自体は変わらないと思うんですが。
 こうして本格的な稽古に入る前段階で、コミュニケーションを取れたのはとても良かった。その駆け引きというか、「これの、何が面白いのか?」というところからはじめ「何がどう行くのか」わからないまま進むことが、今スリリングで楽しくて仕方ない。岡田さんに「良かった」と言われても判断しかねることも多いし(岡田笑)。
 でも僕は動くしかないから、とにかく動き、今までやってきたことを見せているつもりです。その中で岡田さんが無反応にスルーするものもあれば、動きに注目してくれる時もある。注目されたときはやはり嬉しくて。まあ、子供の生徒なようなものです(笑)。

岡田:でもスルーしていても「良いな」と思っているものもあるんですよ。

森山:あ、あるんですか。でも、黙って引き下がるばかりじゃなく、僕の持ってる技や、一度はスルーされたものも違う形でリヴァイバルさせて、もう一回出そうみたいな、そういう事も考えてはいるんですけれど。同時に今まで自分がダンスをやってきた振付的なもの、ダンスのスタイルに行き過ぎてしまうのは嫌。それも出しつつ、違う観点からの動きをやりたいんです。そこは自分でも楽しみながらやってます。だから“いじられ願望”は今かなり満たされていて、自分のM気質を再認識しています(笑)。

金氏:今、森山さんが仰ったことが僕にもよくわかるんです。確かに岡田さんから出て来る言語は難しい。説明というか、説明でもないのかも知れないけれど、それをどう拾い上げるかが、僕にとって、まだ難しい段階にちょっといる感じで。
 ここ数回、ワークショップにも参加しましたが、来るたびに少しずつ分からない言葉があるので、これは見るのが一番早いな、なるべくたくさん見たいなと追いかけるようにしているんです。他の人の作品と自分の作品が、これだけ密接に関わることは今までなかった。その辺が僕にとってもチャレンジですね。
 願望としては、僕の創り方はいろんな所にあるものを持ってきて、自分のルールで並び替えるというか、既存のものを自分の作品のパーツであるかのように持ってくることが多いんです。それで出来たものも、実は「何かの一部」に成り得る、「何かの空間」に成り得るというようなことにしたい、という考えは前からあったので。その意味で今回、すごく良い機会をいただいたと思っています。
 あと、岡田さん言うところの「なんでもありだし、全部なしかも」みたいな感じが、すごく面白いんだけど、まだ難しいところ。今まで、特にチェルフィッチュの舞台を見ていると、舞台美術が非常にシンプルなことが多いですよね、何も無いこともあったし。その辺から考えて「物があるけどない」というか、「違うものが、ただ同じ空間にあるというだけで繋がっている」というか。今回創るものに関しては、まだ抽象的ですけどそんな感じのイメージを今は持っています。

――岡田さんの言語をどう捉えるかがお二人のスタートラインなんですね。岡田さんは、お二人に対する言葉を、演劇の現場で使っているものと変えていたりはされるのでしょうか。

岡田:そういう器用なことはできないです。僕、岡田語しか喋れないので、参加者にそれを勉強してくださいと。まあ「お前が普通語を勉強しろ」って話なんだけど(笑)。まあ、基本的には言葉で伝え合うべきなんですが、僕が一番望んでるのは、僕が「こうして欲しい」と望んだこととは違っててもいいから、面白いと思えることが、たくさん出て来ることですね。だからその意味では、僕の言葉を正確に理解することはさして重要ではないんですね。僕の方法論を理解したり体現したりするよりも、そこからはみ出した自由なものが欲しい。

森山:それは僕らにとっても有り難い方針ですね。僕自身今回、自分の動きの出し方の視点を広げたいし、なおかつ広い意味では「ダンスで勝負する」ことにもチャレンジしたい。それに対して岡田さんが日々どういうジャッジをするのか、どこが共有できてどこができないのか、そのせめぎ合いが一番大変で、面白いところでもありますよね。

金氏:ワークショップから本番の、一回ずつの公演まで、きっと作品は変わり続けるんでしょうね。でも、その「変わり続ける」という感覚は実は元々僕は意識していることなんです。使うのはコラージュのような方法ですが、そこにたとえば「石膏をかける」「珈琲のシミを使う」など、自分の思い通りにならないもの、「ひとつの現象を丸ごと切り取って持ってくるような感覚」を前から取り入れているんです。
 今までもコラボレーション、他の作家とひとつの作品を「ひとつを全員で創る」経験はあった。その時は他者の存在を「思い通りにならない自然現象」みたいに感じ・考えるようにしていた。そんな「変わり続けるもの」「自分の思うようにはならないもの」が隣りにあることには全然抵抗はないんです。むしろそういうものを、どんどん自分の作品にも取り入れたいといつも思っている。そういう考え方が、今回の基にはなるのかなと自分自身の中では思っているんですけれど。

――創作の過程で変遷する動きや作品の構成に金氏さんが触発され、作品も進化・増殖していく。 初日と千穐楽では違うくらいに、と。

金氏:そうですね、できればそのくらいやりたいです(笑)。もしくは、そういう変化の可能性を受け入れられるような「場」をあらかじめ作っておく、ということも考えられます。

――ちなみに今作のタイトルには、どのような意図が込められているのでしょう。

岡田:これはワークショップ・リハーサルを見てただの勢い的に、「理由は不明だけれど家電が壊れやすい部屋」という状況を思いついたんですね。家電って、テレビにしても冷蔵庫にしても洗濯機にしても、すごく自分の生活と密着してるのに、それが作動する仕組みとかよく分かってないじゃないですか。だから、ある意味で他者ですよね。なんとなく、そんな存在について考えてみようかな、と思って付けたんですね。まあ、ただのノリです。

――今の岡田さんの思考の展開が、言葉になり、舞台上で用いるテキストになる、と。

岡田:はい、そうですね。ところで僕ね、自分が作るものがよく「美術的」「ダンス的」「音楽的」などと言われることがあるけど、でも正直な話、演劇を創っているというつもりしかないんですよね。なのにどうしてそういうことが起こるんだろうってことを、自分に都合よく解釈すると、たぶんそれは、僕の作品が演劇のポテンシャルをそれなりに顕在化させているからだと思うんです。でそうすると、美術的にとかダンス的にとか音楽的にとか見える。でも、それは単に、演劇という表現が高いポテンシャルを持っているからだけなんじゃないかと思うんです。
 だから今回の森山さん、金氏さんとの創作に関しても、創るのはあくまで演劇という意識です。これまでとはまた違う形で、演劇のポテンシャルをより多く顕在化させられたらいいな、と思っています。

 
PROFILE プロフィール

岡田利規
出身地:神奈川県
劇作家、演出家、小説家


森山開次
出身地:神奈川県
ダンサー


金氏徹平
出身地:大阪府
アーティスト

INFORMATION

プロデュース公演
『家電のように解り合えない』

9月24日(土曜)〜10月2日(日曜)

チェルフィッチュの岡田利規とダンサーの森山開次。
全く異なる個性、作品、特長を持つ二人のアーティストが創りだす
新作舞台の‘テーマ’は ‘解り合えない’

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