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トピックス・インタビュー17

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INTERVIEW
「おもいのまま」鼎談 飴屋法水さん×石田えりさん×佐野史郎さん
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共通項は「ボーダレス」。メディアや表現方法を越境し、刺激的な創作を続ける3人のクリエイターが舞台に集結します。呼びかけたのは女優・石田えりさん。その声に、演出家・美術家として世界的に評価される奇才・飴屋法水さんと、硬軟自在の演技派俳優にしてミュージシャンでもある佐野史郎さんが応えました。三人が集う舞台『おもいのまま』、その片鱗をお話しいただきました。

2011.03.09 INTERVIEW

――「事件」を予感させるような顔ぶれがお集まりですが、企画の発端は石田さんと伺いました。

石田:きっかけは私の思いつきなんです。人間にとって取り巻く「状況」、関係性や事象などは中立というか、誰に対しても同じように存在するものですよね。ところが対応する人間の愚かさや賢さ次第で、同じ「状況」が悲劇にもハッピーエンドにもなる可能性を孕んでいる、と気づいたんです。そんな運命の変転のようなことを舞台で、演劇として見せられたらすごく面白いんじゃないかと自分の中でイメージがどんどん展開して。
でも、それは明らかにこれまでにない形の作品。それを一緒に創ってくれる方を探し始め、最初に思いついたのが飴屋さんでした。飴屋さんは以前、ひとつの戯曲を違うキャストで十何通りにも演出した作品『3人いる!』を手掛けていらしたり、拝見したインタビュー記事などでも、その独自の観念から何が飛び出して来るか分からない方だなあと、すごく惹かれて。
出演をお願いした佐野さんは人間の愚かさと頭の良さ、その両方をきちんと表現できる俳優さんだと思ったから。ほら、愚か者にもエリートにも見えそうじゃない?(笑)。

佐野:僕、頭悪いよ。飴屋さんの前でそういうコト言うと、笑われるからやめて下さい(笑)。

――熱烈なオファーを受けたお二人はどう思われたのでしょう?

飴屋:まずは驚きました。荒っぽく言えば商業演劇的な企画でしょう、形態としては。そういう企画が僕のところに来たことはないので(笑)。やったことないことは、一度やってみようかと。それに石田さんは、僕のインタビュー記事を見て興味を持って下さったと。半分以上は美術の話をしていたその記事を、不遜な言い方で恐縮ですが、一女優さんが読んで「面白そう」と思って下さったことも意外でした。ならば石田さんの勘を信じ、その気持に応えたいと思ったのが始まりです。その後、初めて石田さんにお会いした時、「この人となら芝居をやってみたい」と素直に思えました。この人の目は、なんでこんなに夢を見ているような目なんだろう・・・。それで、どうなるかわからないけど、引き受けてみよう、と決心したんです。

佐野:「演出は飴屋さん、共演が石田さんの舞台」という話を事務所から聞いたときは、正直警戒しました、僕は(笑)。

石田:佐野さん、私には全然関係なく「飴屋さんがやるならやりたい」って仰ったんでしょ?

佐野:もー、そういうとこ女優さんなんだからぁ(笑)。そういう訳じゃないけれど、僕と飴屋さんは状況劇場時代からのつきあいで、僕が23歳で飴ちゃんが10代の頃、一緒の劇団にいたんです。石田さん、知らなかったでしょ?

石田:ええ、全然知りませんでした。

佐野:劇団時代は一番仲良かったし、その後も彼の作品は観ていて、いつも気にしていたからこそ一緒にやれるのかどうか躊躇いもあったんです。

飴屋:佐野君、、僕のところに様子を窺いに来たんだよね。「こんな話が来てるんだけど、これどうしたらいいのかな……」って。僕に遠慮せず、それこそ思いのままに、って突き放しましたが。(笑)

佐野:そうそう。僕は劇団出身だけどあまり多くは舞台をやっていなくて。ものの観方を信頼できる人とでないと舞台作りの場に身を委ねられないんです。演出家から俳優、すべてのスタッフで作品の空間・世界をどう進めていくか、全員で共有していないと先に進めない創作でしょ? 演劇は。だから慎重に考えてしまって。

――結果的には、信頼できるチームという判断をされたんですね。

佐野:ええ、飴屋さんへの信頼はもう絶対的にあったし、作品に対しては単純に大ファンですから僕は。ただ飴ちゃんから職業俳優の僕にオファーが来ることはないと思っていて、僕が話を受けたあと、彼に「佐野がやるならヤダ」って言われると哀しいから、先に様子を聞きに言ったわけ(飴屋・石田笑)。

石田:偶然とは言え、そんなに関係性の濃いお二人を結びつけちゃったなんて嬉しい! 演出家と俳優としては・・・?

佐野:生まれて初めて。3年前に山崎哲さんの作・演出で、一緒に俳優として舞台には立ったけれど。あとは状況劇場時代に、二人でエチュードをやったこともあったよね。

飴屋:昔のことよく覚えているよねぇ。僕は、なんでも忘れちゃうんだけどね・・・。

佐野:唐(十郎)さんに唯一褒められたのが、二人で創ったエチュードだったのに。飴ちゃんはすっごい美少年だったんだよ。でも、お互いこれだけ映像作品をやっているのに、石田さんとも初でしょ。

石田:そうなんです。

飴屋:それ意外。佐野くんは本当に幅広いジャンルや監督と、映像をやっているのにね。

――それにしても、思いつきから舞台の企画を立てるとはすごい行動力では?

石田:それほど根を詰めて考えたわけではないんですが、「舞台には舞台でしかできない表現」があると思うんです。それにピッタリの題材を思いついてしまったので、これは動くしかないな、と。

佐野:いつもそういうことを考えているの?

石田:これまでは、あまり考えてなかったんです。女優の仕事をしていると、自分が本当に良いと思うものだけでなく、生業としてやらなければならないことも出てくるでしょ?でも、そういう仕事をすると、一日が永遠のように長く感じられて疲れ方もハンパじゃない。私は独り者だし、だったら自分に嘘をつかず、本当に面白いと思うものをやって行こうと決めたの。でも待っているだけでは「面白い作品」がやって来る訳はないので、「ならば自分で創ろう!」と舞台も動き出したんです。早くしないと死んじゃうしね(笑)。

佐野:すごいバイタリティだなぁ。

石田:振り返ってみると、これまでには苦しいこともあって。でもその経験があるからこそ今、動き出せた自分がいる。だから今日までの時間には、すごく感謝しているんです。それに創りたいものを創ろうと動いたとき、今回のように集まるべき人たちが磁石のようにちゃんと集まってくれる。きっと互いに補いあい、時には反発しながらも良い作品が出来上がる予感がするんです。

――ここにはいらっしゃいませんが、この作品の戯曲を書いているファインベリーの中島新さんとはどのように出会ったのでしょう。

石田:ちょっと尖った感じで何かしらの「毒」があり、尚かつ変なギャグや嘘っぽさのない作家さんを探していて、色んな方に伺う中で、続けて名前が上がったのが中島さんです。取り寄せて読んだ戯曲も面白くて、お願いすることにしました。でも今、中島さん本当に大変だと思うんですよ。何せ嘘や疑念、裏切りなど、人間の負の部分を描かないといけないので、自分が一番向き合いたくない内面、恐怖や真実に立ち向かわなければ書けないんじゃないかな、と。
余計なお世話だとは思いますが、闇の中に飛び込むくらいの勇気を出して、「今までの人生全部を入れて書いてやる!」と、そのくらいの気持ちになってくれたらな、と母のように見守っています(笑)。

佐野:僕らはまだ本を目にしていないので、どうなるか見当もつきません。でも、どんな台本でも本に書いてあることをただなぞるような演技だけはしないようにと心がけてはいるんです。書かれたことの真逆や裏を試したり、ちょっとした言動が運命を大きく変えるような芝居の可能性を探していくのは、大変だけれどきっと芝居ならではの面白さに満ちた作業になると思います。

石田:飴屋さんのインタビューに、演出するときは「どこに嘘があるか見ている」とあって、すごく共感したんです。今の演劇は稽古をして、創り上げて創り上げて「はい完璧!」みたいなことが目標で、その先に死んだような芝居を毎日繰り返してもOKだったりするでしょ? でも、私は「どれだけ嘘をつかないか」の訓練を稽古場ですべきだと思っていて、それは飴屋さんの考え方にも通じているなと思えた。

佐野:確かに、折角の生の舞台なのにパッケージされた製品づくりが目標になって、「それ見せられてもねぇ」ってことはあるね。

石田:そうそう、決まりきった、生っぽくない舞台ね。芝居って、めざすべきはその人が生きているエネルギー、人生を表現することじゃないか、って。亡くなったつか(こうへい)さんのお芝居がまさにそうだ、と最近やっと分かったんだけど、でないと観ている方も面白くないですよね。それに、飴屋さんだったら見られているだけでも恐ろしいじゃないですか。

佐野:それは10代の頃から恐ろしかった(笑)。

飴屋:そんなことないよ。演出のときは、実は自分が何しているかよく分からないんですよ。メソッドとかも僕は特にないし。たぶん・・・きっと僕は、ただ「映す」役割で、僕自身のことなどどうでもいいんです。石田さんなら石田さんの中にある良いものを、ただ映すようなこと。もちろん僕なりにではあるけれど、それが自分の役割と思ってるんです。

佐野:「最初の一滴」が何から始まるのか楽しみですね。石田さんのイメージから想像すると、きっと俳優が真剣に演じれば演じるほど、可笑しい話になりそうな気がする。

――お客様にとっても大きな葛藤が引き起こされる作品になりそうです。加えて、美術や音楽も手がける飴屋さんが、どんな劇空間を創られるかも興味津々です。

佐野:そりゃあ出演者も楽しみ。友人でもありファンの一人でもある僕としては尚更ね。

飴屋:うん、空間のことはまず最初に考えますね。舞台美術と言ってもデッサンが描けるわけでも、いわゆる美術的なことをやれるわけでもないし、そこがどういう感触の空間なのか考えるだけなんだけど。今回は地方公演が多くて、劇場が変わるじゃないですか。その全部に、やはり出向かなくちゃなぁ、と思い始めていて。空間は劇場ごとに変わるから、その空間ごとのベストは全部の劇場で違うし。そういう気がしてきましたね。

佐野:お願いしますよ、ソレは是非(笑)。

飴屋:なるだけそうしたほうがいいよね。僕のはどうしても、さっき言ったようなパッケージ化は、しずらい舞台になるだろうからね・・・。

佐野:(山崎)哲さんとやったときなんか、それこそ1000席の劇場もあれば300席もあるみたいなツアーで。演出的には1から9くらいまでのボリュームを変えなくちゃいけない。結果、どの劇場でも最初から創り直す「ずーっと初日」みたいな状態で(笑)、大変だけど面白かったな。

石田:東京が15回公演で、地方も候補地が17箇所あるうち11箇所決まっていて、最高で33回公演なんですって。それも北海道から九州まで。

佐野:バンドのサマー・ツアーみたいだね(笑)。

石田:北海道いいですよねぇ、ちょうど季節的に花が咲き乱れている頃じゃない?

佐野:なんで女優さんてこう強いんだろうね……。

――でも、これだけ実験性に富んだ作品が全国を縦断するのは痛快な出来事では?

石田:そうそう! 飴屋さんには“新しい風”って感じがするから、作品と一緒に「新しい風が吹いてきたぞ!」みたいな狼煙を上げたいですね。

佐野:飴ちゃんは昔からずっと吹き続けてますから(笑)。

石田:あうるすぽっとさん、ありがとうございます。何が生まれるか、私達もワクワクです!!。



PROFILE プロフィール

飴屋法水
演出家、美術家。


石田えり
出身地:熊本県
女優。


佐野史郎
出身地:山梨県
俳優、映画監督。

INFORMATION

プロデュース公演
『おもいのまま』

6月30日(木曜)〜 7月13日(水曜)

日常に全方位から突きつけられる「選択」と「結果」の化学反応を完全劇化!
観客は舞台上に「人生」を目撃する。

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