『海と日傘』という作品については、どのような印象をお持ちですか?
平田さん:とても好きなタイプの作品です。舞台そのものは見ていませんが、脚本はずいぶん前に読んでいて、一度は演じたいと思っていました。
竹下さん:私も舞台は拝見していませんが、脚本を読んで「これは舞台の戯曲なの?」と感じるほど、まるで小説を読んでいるような感覚に引き込まれました。台本として解釈し直すより、むしろこのままの印象で稽古に臨みたいですね。
平田さん:すべて方言で書かれていますよね。僕の出身地の言葉とは違いますが、僕自身が中央寄りの人間じゃないので(笑)、異質な感じはしないですね。
竹下さん:場所は特定されていませんが、西九州の言葉ですよね。方言って、読むだけでは分からなくても、耳にしたときに標準語では表せないようなニュアンスが伝わってきます。相手との距離感や気遣い、憎しみとないまぜになった繊細な愛情、そのあたりが方言で表現されることでリアルに感じられますし、そもそも言葉として出てくる以前の表現がいっぱい必要なので、そこは相手役の方にゆだねる部分もあると思うのですが…。
平田さん:波乱万丈の筋立ての面白さで見せていく話ではなく、話の筋そのものは大体どうなるかは分かる。でも、その一瞬一瞬というのはどちらに転ぶのか分からないという世界。危うかったり、繊細だったり、演じる方としては、その十倍くらいの表現をしなくてはいけないなという気がしています。決してやりすぎず(笑)、できればいいかなと。
竹下さん:こちらも「さあ、芝居をやるぞ!」という張り切り方とは違う気がしますね。 |