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公演情報

【SOMAプロジェクト 稽古場レポート 第2回】

作家・ヤサぐれ舞踊評論家 乗越たかお(Takao NORIKOSHI)

SOMAプロジェクトは、体内に分け入っていくプロセス

――ドイツチームも合流し、日本で本格的なクリエイションが進んでいます。前回に引き続き、演出のファビアン・プリオヴィルさんと、ダンサーのパスカル・メリーギさんにお話を聞きました。


白いライトが幻想的に浮かぶ

――クリエイションの進捗状況はいかがですか。

パスカル(以下「パ」):「日本に来て、いよいよ第二ステージに入ってきたという感じかな。ドイツで日本組と初対面したときは、まるで違う星から来た人々かと思ったけど(笑)。身体のコントロールの仕方ひとつとっても、日本チームのメンバーは僕らのように長年プロのダンサーだったわけじゃないからね。今ではさまざまな新しいアイデアが生み出され、作品が急速に成長と進化する段階にきているよ」

 

――そもそもSOMAプロジェクトについて初めてファビアンさんから聞いたときは、どう思いましたか。

パ:「彼とは1999年から一緒に活動していて、僕はファビアン自身の作品にも出ている。身体的にはかなり近いと感じている存在なんだ。今回は彼が演出で僕が出演者という今までにない係わり方なので、それも楽しみにしているよ」


居酒屋を満喫するパスカル

――ホームステイの話を聞いたときには?

パ:「日本にはヴッパタール舞踊団の公演で何度も来ているけど、泊まるのは大きなホテルばかりだったので、興味はあったよ。そして実際に住んでみると、今までとは違う目で日本を見るようになったな。人々が親切で、英語がわからない人も、一所懸命に助けようとしてくれる。こういうことは以前だったら気づけなかったことだ」

――どちらに滞在しているんですか?

パ:「いろいろだけど、(大窪)晶の家ではたくさん日本食を作ってもらったんだ。お返しに僕も料理を作ろうとマーケットに行ったら、素晴らしいキノコが何種類もあって驚いたね。でもなかには「牛乳と何かをミックスしたもの」とか「調理済みの卵(温泉卵か煮卵!?)」とか、珍しいものも一杯あった。ホームステイするということは料理もするということだし、買い物に行って人と関わるということ。毎日いろいろなことを発見しているよ」


衣裳選びの真っ最中

――日本の家の印象はどうですか?

パ:「東京は日本で一番大きな都市なので、地方はまた違うだろうし、単純に比べるわけにもいかないけど…… やっぱり狭いかな(笑)。でも街は、人が多くてビルが密集していてもきれいで秩序があるのが素晴らしい。それに日本は安心で快適、なにより平和だよね。パリでは外出するとき、襲われる危険があるのでカバンの口を開けたまま財布が見える状態で歩かないようにしているんだけど、日本でそんな心配は要らないからね」

ファビアン(以下、「ファ」):「あとヨーロッパは個人主義が強いのも日本とは違う点だね。パリだと散歩させている犬が道ばたで糞をしても、『小さいからこれくらいはいいだろう』と放置するけど、日本人はちゃんと処理するから街が清潔だよね。日本は集団として生きる知恵があり、街はみんなの場所だという考えが生活の中に浸透している。しつけなのかな。でも教室の掃除を生徒にさせたり、教師が入ってくると起立して出迎えるという日本式の教育をヨーロッパでやったら、親が大騒ぎするだろうね(笑)」

――「日本は幕の内弁当文化といわれますが、小さな所に整理して美しく収まっているのが好き、という面はありますね。また東京は、江戸時代に四年に一度のペースで大火があったため、住居はいつ燃えてもいい寝るだけの簡素な造りで、そのかわり花見などの公共スペースを大切にしたということがあります。

パ:「なるほど。でも公共の心地よさへ貢献するために、日本人は自分の個性を犠牲にしている部分もあるんじゃないかな」

――そうですね。ただそれは「個性」のとらえ方の違いもあるかもしれません。ダンスにしても、パラパラのように「同じ振りをするからこそ個性が比較できる」と感じる。つまり「個性は、公共の中でこそ生きる」という考え方もできますね。

パ:「なるほど。非常に面白いですね」


ドイツ勢のパワフルなダンス

――では作品についてうかがいます。前回は「舞台全体がひとつの身体であり、細胞が重要な役割を果たす」とおっしゃってましたが、そのコンセプトは変わりませんか。

ファ:「はい。ただステージは『身体の拡張』ではなく、たとえて言うなら外科手術のように身体の内部に分け入っていくものになります。血管や血液を見、さらに顕微鏡で拡大して細胞を見て、『人を人として成立させている物』が見えてくる。赤い舞台は人を深く探っていく空間で、出演者一人一人が細胞なのです」

――SOMAプロジェクトでは、「身体の中に入る」ことと「二つの国のダンサーが理解を深める」という次元の違うふたつのことが、進行していくわけですね。


皆で一体になってのクリエイション

ファ:「はい。SOMAプロジェクトで大切なのはプロセスです。一つの回答、ひとつの結果を見せたいわけではありません。作品は完成しても、そこで終わってしまうのではないんです。あくまでも『現在我々はプロセスのこの段階にいるのだ』というステイトメントであり、数年後に再演すれば、全く違うものになるでしょう。じっさい私は日本人と結婚して約15年間も日本の文化に触れているけど、まだまだ理解の及ばないことは山ほどあります。素晴らしい時間を過ごすときもあれば、衝突することもある。しかしその二重性こそが『生きる』ということなんです。必要なのは完璧なハーモニーではなく、つねに理解し合うための挑戦を続けていくことです。それはとてもエキサイティングなことなんですよ。だから『SOMA』は『身体』という意味ですが、『プロジェクト』は『挑戦を続けるプロセス』といえるかもしれませんね」


サーモグラフィで出演者の体温を視覚化 
【稽古場レポート(乗越たかお)】

 インタビューの後、しばらくリハーサルを拝見した。前回のインタビューでファビアンは「身体を視覚化するためにサーモグラフィを使う」と言っていたが、まさにそのシーン。
 壁一面に投影される、ちょっと毒々しい色合いのサーモグラフィ映像は、リアルタイムにダンサーの身体の体温を視覚化していく。ダンサー達は、血流が運ぶ体温の描きだす造形として、映像内に存在する。次第にそれが一種のファンタスマゴリア(幻影)のように変化していく演出もあり、本番での期待が高まる。
 次回第三回目は、本番直前の模様をお伝えする予定だ!

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